イッテルビウム光格子時計

公開日: 21.02.2020

産総研 計量標準総合センターは、社会活動に必要とされるさまざまな「ものを測る基準」(計量標準)を開発し、その標準を社会に供給する役割を担っている。国が定めた最上位の計量標準は「国家計量標準」と呼ばれ、国際単位系の定義に基づき、極力高い精度をもって実現し、安定した標準供給の源として運用されなくてはならない。産総研は各国の標準研究所と共に、不変・普遍なものさしの開発を通して科学・技術の発展に貢献してきた。時間標準に関しては、時計を長時間動作させて安定な時間標準を国内に供給するとともに、再定義後の国家標準の構築と安定した標準供給に向けて研究開発を進めてきた。この取り組みの一環で、年に世界に先駆けてイッテルビウム光格子時計を開発し、年にはストロンチウム光格子時計も開発した。また、光周波数コムは長期間安定に動作し、高い精度でレーザー周波数の制御が可能な装置であるが、産総研では、安定に動作し、周波数雑音の極めて小さい世界最高水準の光周波数コムを開発してきた。 今回、長期運転が可能なイッテルビウム光格子時計の開発に取り組むにあたり、これまで問題であったレーザー周波数の不安定性を解決するために、光周波数コムの技術を用いることにした。 なお、今回の開発は、独立行政法人 日本学術振興会(JSPS)の科学研究費助成事業 基盤研究C(15K)、若手研究B(17K)、基盤研究A(17H)による支援を受けて行った。.

図 カドミウム光格子時計の魔法波長を

図2 イッテルビウム光格子時計の誤差評価の例 a 光格子レーザー周波数と、 b 外部磁場に依存したイッテルビウム原子の 共鳴周波数のずれの測定結果。赤点は測定値、青線は理論予測に基づき、 a では1次関数、 b では2次関数によるフィッティングを行った。. 本成果は、以下の事業・研究プロジェクトによって得られました。 戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO) 研究プロジェクト 「香取創造時空間プロジェクト」 研究総括 香取 秀俊(東京大学 大学院工学系研究科 教授、理化学研究所 香取量子計測研究室 主任研究員) 研究期間 平成22年10月~平成28年3月 極低温原子操作、量子制御技術、最先端のレーザー制御技術の高度化により、セシウム原子時計の精度を陵駕する、新しい原理の原子時計「光格子時計」の実現を目的としています。.

山口 敦史. 理化学研究所 開拓研究本部 香取量子計測研究室 主任研究員 香取 秀俊(かとりひ でとし) (光量子工学研究センター 時空間エンジニアリング研究チーム チームリーダー、東京大学大学院 工学系研究科 物理工学専攻 教授) 研究員 山口 敦史(やまぐち あつし) (光量子工学研究センター 時空間エンジニアリング研究チーム 研究員).

セシウム原子時計に比べて、振り子の振動数が約10万倍大きな光の振動を使うと、その振動数の分、高精度な原子時計を作ることができます。光の振動を使う原子時計のことを、特に「光時計」と呼びます。光時計は、 光周波数コム 注5) と呼ばれる光周波数のカウンターが発明された(2005年ノーベル物理学賞)ことで、実現可能な時計となり、この15年間で著しい進歩を遂げました。.

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長期間運転可能なイッテルビウム光格子時計を開発――国際的な標準時の精度向上に貢献 産総研と横浜国大

今回、時計の動作に必要な全てのレーザー光源を 光周波数コム で制御する、新しい制御システムを構築することで、イッテルビウム光格子時計の安定した動作を実現した。数カ月の実験期間内において1回3時間以上の運転を定期的に行い、積算運転時間は60時間以上となった。これまで他機関のストロンチウム光格子時計で長期運転が実現されていたが、イッテルビウムにおいても実現可能であることを示した。この光格子時計とマイクロ波を用いた従来の原子時計を定期的に比較することで、国際原子時の精度向上への貢献が現実的になった。さらに、この安定動作可能な光格子時計を用いることで、時計としての誤差要因を詳細に評価することが可能になり、時計の精度が万年に対して1秒程度の誤差に相当することを確認した。開発したイッテルビウム光格子時計により、将来の国際原子時の精度向上への貢献が期待される。.

科学技術振興機構 広報課 〒 東京都千代田区四番町5番地3 Tel: Fax: E-mail:. 理化学研究所 広報室 報道担当 〒 埼玉県和光市広沢2-1 Tel: Fax: E-mail:. このような異種原子時計の超高精度な比較は、物理定数の恒常性の検証を可能にし、素粒子の 標準理論 注4) を超える新しい物理の解明に役立つと期待されます。. 本研究成果は、室温で18桁の 精度 [3] を持つ小型・可搬型光格子時計の実現につながる重要な成果です。.

なお、今回の開発は、独立行政法人 日本学術振興会(JSPS)の科学研究費助成事業 基盤研究C(15K)、若手研究B(17K)、基盤研究A(17H)による支援を受けて行った。.

  • 国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 中鉢 良治】(以下「産総研」という) 物理計測標準研究部門 【研究部門長 藤間 一郎】時間標準研究グループ 小林 拓実 研究員、赤松 大輔 主任研究員、安田 正美 研究グループ長、周波数計測研究グループ 稲場 肇 研究グループ長は、横浜国立大学と共同で、長期運転できるイッテルビウム 光格子時計 を開発した。. 本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金特別推進研究「超高精度光格子時計による新たな工学・基礎物理学的応用の開拓(研究代表者:香取秀俊)」、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業ERATO「香取創造時空間(研究総括:香取秀俊)」、科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業 大規模プロジェクト型「クラウド光格子時計による時空間情報基盤の構築(プログラムマネージャー:香取秀俊)」による支援を受けて行われました。.
  • 産総研について 研究成果 連携と技術相談 コミュニケーション 採用情報 アクセス お問い合わせ.

JSPSJSTERATOJST. JSPS C15KB17KA17H.

~周波数比の高速かつ超精密な測定は新しい物理への窓を開く~

光時計は、セシウム原子時計の性能を100倍以上も凌駕する10 -18 の不確かさに近づきつつあります。この結果、「秒」の再定義に向けた議論が始まっています。しかし、1秒を光時計で再定義する前に、まずは光時計の「再現性」が担保される必要があります。.

なお、この技術の詳細は、学術誌 IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control で年9月18日にオンライン掲載された。. 産総研について 研究成果 連携と技術相談 コミュニケーション 採用情報 アクセス お問い合わせ. レーザーは周波数安定度に優れ、理想的な振動子 振り子 に近いと考えることができるが、長期的には周波数が徐々にずれていく。この周波数のずれを原子のある準位間の遷移の共鳴周波数を基準に補正することでより理想的な振動子が実現でき、時計の精度が向上する。光格子時計では、レーザー光を重ね合わせて作る光格子という容器に、約千個の原子を捕獲する。これにより信号が大幅に増加し、精度の向上に寄与する。.

時間の単位である「秒」は、現在セシウム原子のある準位間の遷移に共鳴するマイクロ波の周波数を用いて定義されているが、近年、マイクロ波よりも周波数が4~5桁高い光を用いた、より高精度な光格子時計が注目されている。光格子時計は光を用いる原子時計(光時計)の1つで、次世代の秒の定義の有力な候補である。これまで、国際度量衡局で開催されたメートル条約関連会議で、 秒の二次表現 (新しい秒の定義の候補)として、イッテルビウム光格子時計を含む8種類の光時計が推奨されたが、どの時計が再定義に最も適しているかの結論は出ていない。 また、最近のメートル条約関連会議で、秒の再定義に向けた要求精度などの条件が具体的に設定され、その条件の1つに、光時計による国際原子時の精度向上が挙げられた。時計の高精度化に関する研究のみならず、高精度な時計を運用し、時間標準として社会へ供給するための実用化に向けた研究も秒の定義改定に向けて達成しなくてはならない条件の1つであるが、この条件を達成するには、長期運転可能な光時計の開発が必要である。これまで、研究が先行しているストロンチウム光格子時計において長期運転が実現されたが、さらに他の原子を用いた光時計でも長期運転の実現が求められていた。 イッテルビウム光格子時計は、時計の高精度化を実現する上で、 黒体輻射 の影響が小さいことや、 核スピン が小さいためにエネルギー準位が単純で制御しやすいといった利点があり、産総研をはじめ世界中で盛んに開発が進められてきた。.

図5 低温型イッテルビウム/ストロンチウム光格子時計 原子を捕獲、励起するための光は全て光ファイバーで光源から送られています。手前に見えるスターリング冷凍機で恒温槽を-175度まで冷却し、原子の共鳴を励起する際の熱輻射の影響を抑制します。.

イッテルビウム光格子時計は、時計の高精度化を実現する上で、 黒体輻射 の影響が小さいことや、 核スピン が小さいためにエネルギー準位が単純で制御しやすいといった利点があり、産総研をはじめ世界中で盛んに開発が進められてきた。.

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図1 イッテルビウム/ストロンチウム周波数比測定の概要 イッテルビウムとストロンチウム光格子時計の励起レーザー周波数は、光周波数コムによって安定化します。さらに、励起レーザー周波数は、コンピューターシステムによって各原子の共鳴周波数に合うように制御します。熱輻射による周波数シフトを抑制するため、原子は-175度まで冷却された恒温槽中に輸送され、励起レーザーで時計遷移が観測されます。. 本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金特別推進研究「超高精度光格子時計による新たな工学・基礎物理学的応用の開拓(研究代表者:香取秀俊)」、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業ERATO「香取創造時空間(研究総括:香取秀俊)」、科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業 大規模プロジェクト型「クラウド光格子時計による時空間情報基盤の構築(プログラムマネージャー:香取秀俊)」による支援を受けて行われました。.

時間の単位である「秒」は、現在セシウム原子のある準位間の遷移に共鳴するマイクロ波の周波数を用いて定義されているが、近年、マイクロ波よりも周波数が4~5桁高い光を用いた、より高精度な光格子時計が注目されている。光格子時計は光を用いる原子時計(光時計)の1つで、次世代の秒の定義の有力な候補である。これまで、国際度量衡局で開催されたメートル条約関連会議で、 秒の二次表現 (新しい秒の定義の候補)として、イッテルビウム光格子時計を含む8種類の光時計が推奨されたが、どの時計が再定義に最も適しているかの結論は出ていない。 また、最近のメートル条約関連会議で、秒の再定義に向けた要求精度などの条件が具体的に設定され、その条件の1つに、光時計による国際原子時の精度向上が挙げられた。時計の高精度化に関する研究のみならず、高精度な時計を運用し、時間標準として社会へ供給するための実用化に向けた研究も秒の定義改定に向けて達成しなくてはならない条件の1つであるが、この条件を達成するには、長期運転可能な光時計の開発が必要である。これまで、研究が先行しているストロンチウム光格子時計において長期運転が実現されたが、さらに他の原子を用いた光時計でも長期運転の実現が求められていた。 イッテルビウム光格子時計は、時計の高精度化を実現する上で、 黒体輻射 の影響が小さいことや、 核スピン が小さいためにエネルギー準位が単純で制御しやすいといった利点があり、産総研をはじめ世界中で盛んに開発が進められてきた。.

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知っておきたい:

コメント

  1. 今回、国際共同研究グループは、カドミウム原子を光格子に捕獲し、光格子レーザーによる 光シフト [4] を精密に測定しました。その結果、光シフトがゼロになる光格子レーザーの波長(魔法波長)を、 イッテルビウム光格子時計とストロンチウム光格子時計の周波数シフトの評価を改善することによって、将来的には、単一イオン時計では数カ月かかる1x10 -18 の精度を、光格子時計では2日以内の計測時間で実現できるようになります。このような時計比較は、次世代の時計としての信頼性を担保し、新しい「秒」の定義へ移行するための推進力となることが期待されます。.
  2. 科学技術振興機構 研究プロジェクト推進部 古川 雅士(ふるかわ まさし) Tel: Fax: eratowww [at] jst. 図1 カドミウム原子の魔法波長を決定するために開発した装置の概念図 ディスペンサーから蒸気として放出されたカドミウム原子は、レーザー冷却光により真空チャンバーの中心に捕獲・冷却され、光格子レーザーでトラップされる。光格子レーザーの波長と強度を変えながら、原子が吸収する時計レーザーの周波数シフト(光シフト)を測定する。この際、時計レーザー光に共鳴してカドミウム原子の状態が変化したかどうかを、カメラで観測する。.
  3. 本成果は、以下の事業・研究プロジェクトによって得られました。 戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO) 研究プロジェクト 「香取創造時空間プロジェクト」 研究総括 香取 秀俊(東京大学 大学院工学系研究科 教授、理化学研究所 香取量子計測研究室 主任研究員) 研究期間 平成22年10月~平成28年3月 極低温原子操作、量子制御技術、最先端のレーザー制御技術の高度化により、セシウム原子時計の精度を陵駕する、新しい原理の原子時計「光格子時計」の実現を目的としています。.

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